年明けからあっという間に1週間。旧年中はお世話になりました。今年もよろしくお願いします。楽しい1年になりますように。
このところ浅はかな映画感想文ばかりで恐縮ですが今日も同じく。少しネタバレあります。
「リリーのすべて」を観た。 自分にとって理解し易い内容ではなかったけど観てよかった。心の性別と身体的性別が一致しない事は自身の内外から当人と身近な人々を苦しめるのだと想像は出来ても、しっくりと理解するのは難しい。対して伴侶がそうだった場合の、自分の理解の外側を受け入れる事の困難の方が自分には近く思い描く事が出来るので、どうしても感情移入するのは奥さんの方にだった。
リリーを演じたエディ・レッドメインは以前ホーキング博士を演じた映画で知った。緻密な役作りで機械のように正確な演技はとても緊張感があって見応えがある。先日書いたクリスティン・スコット・トーマスも似たタイプ。奥さんゲルダを演じたアリシア・ヴィキャンデルは同じように緻密でありながら更に人間臭い温もりのある演技で凄い人だなと思った。付け加えると実際のゲルダ・ヴェイナーに顔立ちもかなり近い。
リリーが鏡に向かって自身の肉体に対する違和感を露わにするシーンはいかにも強烈なシーンを撮ろうと云う演出に思えて要らないなと思う。こう云うシーンが無ければもっと映画の内容に入り込めるのにと思うけれど、インパクトのあるシーンを設ける事がスポンサーを納得させるのに必要なのだろうか?分からない。
登場する絵画作品は映画の為に用意されたもので、実際に残されている作品とは違うのだと思う。かなり丁寧に準備されたのは分かるけど、でもイマイチだったな。
素晴らしかったのはラスト。リリーの故郷の荒涼とした風景に居場所を求めて叶わなかった魂が吸い込まれて行く。とても寂しいシーンだけれどゲルダの表情が素晴らしく、双方にとってこれが「救い」だったのだと心に残った。「知る」事はいつも経験に間に合わない。
時代背景を考えると、とてつもなく困難な闘いに挑んだ人だったと思う。今はトランスジェンダーと云う言葉をよく見聞きするようになって理解が広がったとは思うけど、まだまだ偏見が多いのだから、観れてよかったと思った次第。
話は変わって、1月9日(日)〜1月16日(日)まで大阪のnoji+と云うお店でイラスト展をさせてもらいます。よろしくお願いします。
西脇一弘 イラスト展 2022
noji+:大阪府池田市鉢塚1-10-3-2階
When I meet a strange memory.
Knowledge function more late than experience.
私が見知らぬ記憶に出会う時、知識は経験より遅れて機能する。