2020年8月25日火曜日

晩夏

8月に入ってから酷い暑さが続いていたけど、ここ数日少し和らいだかも知れない。 知り合いの若者が新たに立ち上げた宅録ユニット?に参加する事になって、ここ数日録音作業に没頭していた。変な楽曲目白押しだけど暗さは無くて、むしろ仄かな日差しを感じるような明るさがいいなと思う。フラット5thやシャープ9thなどテンションを多用しているけど、所謂ジャズマナー?的な使い方ではないので、調性は曖昧で混沌としている。リズムの組み立て方はシンプルで、あまりグルーヴを意識したものではないと思う、、等々を考えつつ、久しぶりに「音を外した」とか「リズム(テンポ)が揺れた」とかをNGの理由にしない作業を繰り返して楽しかった。自分が録音したものはあくまでも「素材」だと考えて、今後どう進めて行くのかは若者にお任せ。どんな音楽になるのかとても楽しみ。 

 近年の「録音物」への考え方は、僕らが若い頃とは一変したと思う。録音した音源はレコードやCDに製品化されてどこかのレーベルから発売して流通するのが僕らが思う「録音物」。近年は「物」として音源が流通するのは一部のマニアックな層の間だけかも知れない。そして、音源制作から宣伝、流通まで本人自ら行える環境が整っているので、少なくとも自分が続けて来たようなマイナーな音楽活動において「レーベル」や「音楽出版社」なんて現在はあまり意味がない気がする。しかしそれでも原盤を保有しそれを商品として売り続けているなら、レーベルは仮に売上ゼロだったとしても報告の義務があると思う。

現在sakanaの全アルバム15枚の中で流通しているのは「Blind Moon」と「Locomotion」の2タイトルのみ。CDでの流通は無くてストリーミングかmp3ダウンロード販売。販売元はMemory Labと云うレーベルで収録曲を預かっているのはドニドニと云う音楽出版社。この2タイトルの売上報告は2010年以降10年間一度も無い。もしこの10年間の売上について訊ねたところで報告するような売上は無いと云うのだろうし「支払われるべきものが不払いだ」と訴えたいわけではない。ただこんな会社から音源を買ったりしないでほしいと思っているだけ。今までに作って来た録音物は早くキレイさっぱり全て廃盤になってほしいと思う。そして聴いてほしいのはこれからのライブ演奏とこれから作る音源だと。

いつだって自分にとっての最良の作品はこれから作ろうとしているもので、もしそう思えなくなったら音楽も絵もやめると思う。 とは云え、自分たちが若い頃に心血を注いだ過去の作品に対して「廃盤になってほしいと思う」しかないのはとても残念だ。だっていつもその時作っている作品が最良だと思って取り組んで来たのだから。

2020年8月10日月曜日

所在ない情景

珍しく連日投稿。ちょっと書いておきたい事があったので。

2010年〜約10年間、下北沢のleteと云うお店の壁に設置されていた絵が、お店の改装に伴って戻って来た。2008年にお店が主催したコンサートのステージに設置する為に「樹の絵」を描いてほしいと依頼を受けて制作した絵だった。依頼に対する報酬は一万円。お店の依頼で描いた絵であり、報酬ももらっているのでお店が必要であればいつまでも使ってもらって構わなかったけれど、不要になったら返却してほしいと思っていた。「依頼」はCDジャケットや雑誌のページにイラストを頼まれる場合と同様で、あくまでもその「絵柄」を制作提供する事で現物の譲渡ではない。と云うか単純に一万円で大きな作品を販売するのは、自分が費やした労力と時間に対して難しい。もちろんこの事はお店と話し合って合意しています。

戻って来た絵は損傷箇所が多かったので、出来る限りの修復を試みて、もしうまく行ったらあらためて販売しようと考えた。作業は思った以上にうまく行って、表から観るぶんには描き上げた当初と変わらない状態に復元出来たと思っている。裏面は継ぎ接ぎだらけだけれど。

2008年の「leteのコンサート」はお店が初めて店外で企画したコンサートで、自分も参加する事になっていたので、なんと云うか、制作に気持ちが入っていたのだと思う。今まで描いてきた絵の中でも特に気に入っている作品のひとつだと思っている。草むらと大きな樹、海なのか河なのか定かでない背景と薄明かりの空、全てがシンプルで所在ない情景。

そしてお店の壁に設置されてたくさんの素晴らしい演奏と共に10年間を過ごさせてもらって感謝しています。

と云うわけでHPの通販ページに載せてあります。
もし興味があったら確認してみてください。(追記:売約済みになりました)
http://kazuhironishiwaki.jp




2020年8月9日日曜日

真夏のマスク

quatre saisons 町田店でのイラスト展、開催中です。暑い季節に100枚のイラストを一気に描き下ろしてこのお店で展示してもらうのが、ここ数年の恒例行事。今年も7月後半に集中して101枚を描き下ろしました。

エアコンNGの暑い部屋で、汗だくのおっさんが小さなベニヤ板のボロ机の前に座り込んで時計を睨みながら、小さな可愛らしい?イラストをテンパって描き続けている様子は単なるギャグだと思う。でもそんな引き籠りのキモいおっさんに成り下がっても、思いがけず可愛い動物が描けた時の喜びがあるのだから上出来かも知れない。23日(日)までなので、よかったら足を運んでみてください。
http://www.quatresaisons.co.jp/shop_list/id=142

話は変わって、外出時はマスクをするのが当たり前になった。暑いと気が遠くなるけど。うっかりし忘れて出かけると終始「すみません」と云う心持ちで居た堪れない。逆にマスクをしないで堂々と歩いている人を見ると、なんとなく強面のガラの悪い人なのかな?と思ったりする。電車に乗ってマスク姿の人々を見渡しながら、マスクを外すとどんな顔だか想像するのが暇つぶしに最適。なぜだか容易に想像がつく人もいて、その場合はあまり面白くないけど、正解が分からない場合はあれこれ色んなパーツを当てはめてみる。そんな風に暇つぶしに利用されていると分かったら気を悪くするかも知れないけど、悪気はないので大目に見てほしい。絵を描いていてつくづく思うのだけど、人の顔のパーツはごく僅かな違い、例えば全く同じ形の目や鼻も位置が1mmズレたら、印象は大きく変わる。そしてもちろん形も大きさも配置もバリエーションは果てしない。当たり前だけどそこに「理想」や「正解」はないよね。