2021年11月26日金曜日

3 Doors From Paradise

このところ映画の感想続きで恐縮ですが、今回もです。

「3 Doors From Paradise」邦題「ビューティフル・チャンス」を観た。なんの予備知識もなくテキトーに選んで観たけど、とてもよかった。このところよかったと思う映画を幾つか観たけれど、断トツかも知れない。

しかし感想レビューの殆どが、 心温まる、癒される物語、、となっているのがなんだか腑に落ちない。以下少しネタバレ。自閉症で生活力のない男性が施設を追い出されてしまうが、売春婦の母親に苛まれながら劣悪な環境に暮らす少女と、恵まれない生い立ちの所為で家族を持つ事に憧れを抱いている女性(恋人が薬の売人)と出会って、温かい交流と共に居場所を得て行く、、と云うシンプルなストーリーなのは確かなんだけど。そして、自閉症の男性に対して何の偏見も持たずに当たり前のように親しく関わろうとする少女と女性の鷹揚さと聡明さは確かに頼もしく心温まるのだけども、、。 

別の側面で云うと、この映画は演者を揃える事が出来たならば、撮影場所は自分の部屋と友達の部屋を借りて、近所の道端と公園を利用して、スマホで撮影して丁寧に編集すれば作れてしまうんじゃないかと思うくらいの低予算。そして明らかにB級っぽさを意図的に作っている。施設のおばさんの着ているものが登場毎に奇抜さを増したり、所々に金のかからないギャグが仕込まれていたり、なんともビミョ〜な違和感のある音楽や効果音の使い方も、いちいちB級っぽく気が利いている。

そしてあるシーンで少女が自閉症のおっさんの目を見据えて訴える。「闘うのよ!」この映画の芯はこれに尽きると思う。人と同じように、出来る、出来ない、持っている、持っていない、等々で差別したり見下したりする世の中に対して、自分達を惨めにしようとしたってそうは行かない、「私たちは全然平気で楽しくやって行くんだ」って、中指を立てているような作品なんだと思う。最後のドタバタも含め、全体に悲壮感を持たせずに淡々としてるところが良いんだよね。そう考えれば低予算もB級っぽさもこの映画の必然だったのかも知れない。

なんとも味のある出演者ばかり揃っているし、簡潔で的を得た台詞やヘンテコで楽しませてくれるカメラワークなどさり気なく、でも丁寧で用意周到な作品だと思うな。この監督はもしかしたらジム・ジャームッシュとか好きなのだろうか?でも内容の空虚さと云う点では全然似ていないけども。好きな映画は?と訊かれたらきっとこれからはこの映画を含めると思う。

蛇足1、
最近観たもう一つの映画は「人生スイッチ」。数年前にちょっと話題になっていたので観てみたかった。ちょっとだけ面白かったかな、、でも途中で観るのやめたくなってしまった。子どもの頃に何処かでチラッと観た覚えがあるアメリカTV映画「トワイライト・ゾーン」や'90年頃のTV番組「世にも奇妙な物語」を思い出したけれど、。