小学生の頃、先生が国語の授業で唐突にこの詩を教えてくれた。子供心に、空を見上げた時の、この行き場のない想いは大人になってやがて老人になっても変わらないんだなと、印象に残った。
「雲」
もうお前は忘れてゐるかもしれないが
あの時頬かむりをして
開墾地の隅で泣きじゃくってゐた子供が
私だよ 雲よ
あのとき茜色だったお前が
見る見る光を失って灰色に沈み
夕べの空にとけてしまったのを
いつまでも見てゐたのは
私だよ 雲よ
お前は忘れたかもしれないが
五十年たってもあのときの涙が
まだ乾かないのだ 雲よ
更科源蔵
変わらないどころか、追憶は年齢と共に磨かれて深い輝きを増す。
ささやかななんでもない事が特別な事になって、
特別だと思っていた事は何処かへ消えてしまう。
昨日何の気なしに聴いた笹倉慎介さんのシンプルな歌が素晴らしかった。
「いきさつ」
街はずれのビルを抜けて
一度だけ入ったきりの店や
誰かが手をかけた庭や
確かに二人が暮らしたアパート、、
https://www.youtube.com/watch?v=0vFi9G6fGOM
年齢を重ねながら、いろんなものを捨てて、
もう自分は空っぽになってしまうんじゃないか?と心配になった時、
きっと人は一番豊かなものを手にしている。