2016年11月22日火曜日

よく知っている未だ訪れたことのない場所

絵を観て古い記憶が想起される事はわりとよくあると思う。誰かの描いた、自分には全く覚えのない場所や情景を描いた絵が、自分の記憶とリンクして心を動かされると、その作品は自分にとって特別な、好きな、作品になるかも知れない。

絵には観るものにそう云う作用を投げかけようと意図して描かれたように思えるものもわりと多いと思う。エドワード・ホッパーの絵なんかは自分にとってそう云う作品。わざと画面に解決しない謎を残しておく用意周到な作風は、近年だとミヒャエル・ボレマンスの絵にも共通した印象を持っている。もちろんどちらもとても好きな画家。

でも自分は頭が悪い所為か、単に才能がないだけだと思うけど、そう云うある種、理論的に理論的でないものを構築しようとする創作が苦手と云うか出来ない。と云うか「創作」と云う意思がそもそもあまりないような気がする。ただ人なら人を、風景なら風景を描く事しか考えられない。そして、その人物は未だ会った事のない人物であり、その風景は未だ行った事のない場所で、でも自分の中のどこかしらに、子供の頃から在った場所であって、居た人物なのだ。ただそんな事を薄っすらと考えながら、いつも絵を描いている。