2017年1月25日水曜日

手順

以前から度々思っている事だけど、絵を描いていて最も重要だなと思うのは「手順」これは、例えばイエローオーカー(黄土色)のジェッソで地塗りをしてから、メディウムで薄く溶いた絵の具で下地が透けるように描く、、と云うような大雑把な手順だけではなくて、もっと細かな筆の運びなども含まれる。対象を逆光で見ている場合など、対象全体を覆うように濃い影が出来た場合、首から肩にかけてと顎から首にかけて、どちらの部位に先に影を入れるのが効率がよいか?とか、そう云う事。筆の運び方と云うのは、アカデミックな美術教育を受ければ、たぶん言及される事なんだろうけど、僕はそう云うのに全く縁がないまま今まで描いて来たので、人から教わる機会はなかった。でも一人で勝手に試行錯誤していても、こうやって重要だと思う事なんだから、きっと先人が優れた手本を多く残しているんだろうと思う。

例えばルーベンスやベラスケスは、僕の様に無知なものでも優れた技術を持った画家として歴史に名を残しているのを知っている。流麗で無駄のない筆の運びは滑らかでキラキラした光を放つ描写に優れている。近年の画家ならボレマンスはベラスケスに倣った優れた技術を習得している事で知られている。

レンブラントは筆の運びの不器用な画家だと思う。深く沈殿する様な画面の中に「やり直し」の痕跡が多い(と自分には見える)。だから洗練された画面ではないけれど、独特の感動的な陰影は試行錯誤しながら描いた「あの感じ」から生まれたものかも知れない。

だから「手順」が重要と云うのは、何も「洗練されて要領よく」出来ているのがよい、と云うような単純な事ではなくて、絵の仕上がり、その絵が放つ「何か」に対してとても影響が大きいと云いたかっただけ。まあ当たり前の事だったかも知れません。